内側から数えて4番目の指、薬指。よく考えると不思議な命名です。親指、小指は見た目そのものですし、人差し指は機能からの命名でしょう。中指に至っては場所がそのまま名前です。ではどうして薬指?
古来この第4指は魔術的な力があると言われていました。このため西洋では魔力の品である指輪をつける指、ring fingerと呼ばれます。またラテン語では「医師の指」と呼ばれていました。古来医術は魔術と通じていましたから、やはり魔力を持つ指という意味でしょう。医師の指と薬の指。洋の東西を越え、同じ意味合いをもつことに驚きです。
ではなぜ、第4指だけが魔力を持つというポジションを得たのでしょうか。まったくの私見ですが、薬指自体を自由に動かせなかったからではないでしょうか。たとえば、ピアノを弾くように指先を全部机につけた状態で各指を1本だけ持ち上げていくと、薬指だけは弱々しくしか動きません。これは第4指を伸ばす筋の神経支配が小指と重なっているからで、小指を立てると薬指が追従するのはこのためです。これを見た古来人が、これは魔力に支配されている!と信じるのも無理からぬところです。
余談ですが、薬指が人差し指より長いと肉食系である、という俗説があるそうですね。なんでも薬指は胎児期に男性ホルモンの影響を受けやすいので、薬指が長いとより攻撃的、積極的なんだとか。実際に中指側の指の付け根から指の長さを測ってみると、自分の場合、人差し指より薬指の方が数ミリ長かったです。肉食系なのでしょうか。肉は好きですけど(笑)。
さて、薬指には紅差し指という美しい呼び名もあるそうです。使うことがないため清潔だったから口紅を差すのに使われていたとのこと。また、薬指は力を入れにくいため、余計な力がかからずにうまく紅を差すことができるからとも言われています。なんとなく後者の方が、美に対する強い思い入れが感じられてしっくりきます。
ちなみに。人々を病から救う仏、薬師如来の像は薬指を少し前に倒しています。その指で薬をやさしく塗るためだそうです。